パテック・フィリップの芸術ともいえる<グランド・コンプリケーション>を紐解く!

パテック・フィリップのグランドコンプリケーションの始まりとは

時計愛好家が最も追い求める「トゥールビヨン」「ミニット・リピーター」「レトログラード日付表示針付永久カレンダー」「ムーンフェイズ表示」の5つの複雑機構を組み合わせたパテックフィリップのグランドコンプリケーション。
始まりは1993年に発表された5016モデル。

5016モデルは凸型ベゼルと直線2段ラグを備えたクラシックなカトラバ・スタイルのラウンド型ケースが特徴。
文字盤はシンプルで落ち着いたレイアウトでありながら、一目でそれとわかるオリジナリティが感じられる。

発表当時、5016モデルは現行コレクション中、最も複雑なパテックフィリップの腕時計だったとか!

イエロー、ローズ、ホワイトゴールド、そしてプラチナ・モデルがラインナップされ、多彩な文字盤を備えたこのモデルは、極めて少数が製作され、2001年にスカイムーン・トゥールビヨンが登場するまでの18年間、コレクターの間で途切れることのない成功を収めたという。

息子のフィリップ・スターン氏によるデザインの改良

2009年、フィリップ・スターンの後を継いで息子のティエリー・スターンが社長に就任。そのわずか2年後の2011年、歴史的功績を収めた5016モデルのデザインが見直されることに。
ここで5216モデルが登場する。

ニューモデルは5016モデルよりも大きなケースに、5016モデルと同様のキャリバーR TO 27 PS QR LUが搭載。

このサイズ改良の結果、ミニット・リピーター・チャイムのためのスペースが大きくなり、より豊かな音響が生まれたという。

ケースのデザインも、クラシックなラウンドケースとスマートなラグを備えた、1930年代のカトラバ96モデルにインスピレーションを得た控えめでシャープなスタイルに。

当初はシルバー・オパーリン文字盤のローズゴールド・モデルが発表されたが、2013年にはラック・ブラック文字盤のプラチナモデルが加わった。

5016モデルの系譜の新モデルが登場

2017年に登場した新しい5316モデルはプラチナ仕様。
ティエリー・スターンは1993年の5016モデルから新しいケースデザインのインスピレーションを得たという。

5316モデルは、凸型のベゼルと2段ラグを備え、シンプルでエレガント、かつダイナミックなデザイン。

このモデルは、ホワイトゴールドの3ファセット仕上げドフィーヌ型時・分針、植字ホワイトゴールドの弾丸型アワーマーカー、ダイヤモンド型の先端を備えたレトログラード日付表示針、ホワイトゴールドの別付けフレームで縁取られた曜日、閏年サイクル、月表示窓を特徴とする、新しい本黒七宝の文字盤を配している。

偉大なクラシックから現代的で若々しいスタイルへ

ティエリー・スターンは、5316モデルのケースデザインを維持する一方で、1993年来続いてきたこのモデルの家系に、多様で洗練された外観の文字盤が創作されてきた事実に注目。
ミニット・リピーター・トゥールビヨン5303R-001モデルやミニット・リピーター・レトログラード日付表示針付永久カレンダー5304/301Rモデルのような透明な文字盤が興味深いアイデアに。

あらゆる方向性を自由に探求していった結果生まれたのが、外周に向かって濃くなるブラック・グラデーションのメタリックブルー・サファイヤクリスタル文字盤。

これは時計の機械的心臓部、特にカレンダーとムーンフェイズ・ディスクをベールに包まれた形で垣間見せると同時に、文字盤の多数の表示は完璧に判読できるという、何とも美しくスペシャルなデザイン...!

改良はそれだけにとどまらない。このモデルはレトログラード日付表示と曜日、閏年サイクル、月表示窓は、サファイヤクリスタル文字盤の開口部に別付けされたホワイトゴールドの一体型フレームで縁取られ、日付表示目盛りはオニキス・インレイで作られている。

あらゆるディテールに細心の配慮が注がれたクラフトマンシップと仕上がりの高さは、時計マニアを唸らせる非常にクリエイティブな一品だ。

さらに、9時位置と3時位置にパテック・フィリップの象徴である2つの小さな「クルー・ド・パリ」パターン、エンボス加工ファブリック柄のネイビーブルー・カーフスキン・バンド、コントラストを持たせたステッチ、そしてプラチナ製折りたたみ式バックルがこのモデルを完璧なものにしている。

1990年代にパテック氏によって創作されたフラッグシップモデルがティエリー氏によって新たな命を吹き込まれ、将来の世代に向けて再解釈されていくのが今後楽しみ!

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