ジョン・ガリアーノがMaison Margielaを離脱か?
モードファッションの最高峰とも言えるマルジェラのアーティスティックディレクターを10年間勤めてきたデザイナー、ジョン・ガリアーノが来秋退任するという噂だ。
この噂は数ヶ月前に彼がInstagramの投稿を全て削除したことから広まった。また、ブランドのオーナーであるレンツォ・ロッソがジョン・ガリアーノに契約更新を求めていたにも関わらず、ガリアーノはマルジェラとの契約を更新しないことを決定したという。
彼はかつて人種差別的発言を行なったことで、15年に渡り最高のコレクションをデザインしてきたディオールを解雇され、そこから3年半という時を経てマルジェラのアーティスティックディレクターとして返り咲いている。
そして、まだ記憶に新しい今年の1月25日、パリで行われた彼によるマルジェラのオートクチュールコレクションは観客たちをこれまでにない感動の渦に巻き込んだ。
そんな現代における最高のデザイナーの一人、ジョンガリアーノと彼の作り上げたコレクションについて振り返っていこうと思う。
挑戦的で時に物議を醸す天才デザイナーの失墜
1996年のディオールへの就任は、古典的なエレガンスと女性らしさの代名詞だったディオールにとって革命的な出来事だった。彼によってこの老舗メゾンブランドはイギリス的で挑発、衝動、前衛的といったワードが似つかわしいクリエイティブの発信者へとなった。
ところが2011年2月、彼はパリにあるカフェで隣の席に座ったカップルに向かって反ユダヤ的な侮辱をしたのだ。これにより彼のディオールでの華々しい活躍は幕を閉じることとなる。
ジョン・ガリアーノの復帰、そして最高傑作
この人種差別的発言は彼のキャリアに泥を塗ることになり、ファッションの最先端からは完全に見放されたように思えたが、2014年10月、3年半に及ぶ時を経て、マルジェラが彼を迎え入れることになる。
そして2024年1月25日の夜、パリのアレクサンドル3世橋の下で披露されたマルジェラのオートクチュールコレクションがファッション界を震撼させた。
アメリカ人ジャーナリストのデレク・ブラスバーグはInstagramで「ガリアーノの最高傑作。華やかさ、シチュエーション、ドラマ、席で泣いている人々。本物の本物の涙! レース、シルエット、雨粒のように滴る手縫いのスパンコール、ドラマ」と書き込んだ。
あらゆるブランドがシンプルさを追求し、それがショーのモダンなスタイルとして定着していた中でジョン・ガリアーノによる古典的なファッションショーのスタイル、ストーリー性を持ち観客に語りかけるような世界観は観客の心を打った。
恐ろしく、美しい。ファッションの域を超えたファンタジーへの昇華
モデルの顔は陶器の人形のように覆われ、コルセットを締め、その不安定な足取りからはカタコンベ(パリの地下墓地)から這い出てきたかのような、なんとも非現実的でダークな美しさを醸し出すコレクション。そのフィルム・ノワール的な雰囲気に、「メイク、フェイスカバー、指の折れた人形の奇妙な存在......それはとても恐ろしく、でも素晴らしかった」とXのユーザーがシェアした。
また、ジャーナリストのソフィー・フォンタネルは「ガリアーノは私たちの感情を揺さぶる力を持っている。ファッションを超えて、彼は精神、歴史、詩、人間の本質の旅へと誘う」「ファッションはファンタジー。その謎を解き明かすために何度も見たくなるような、幻想的で非現実的なファッションショーだった」と述べている。
この息を飲むほどに美しいと賞賛されたマルジェラの2024年春夏コレクションは、彼がマルジェラを離脱した未来も人々の心に焼きついて離れることはないだろう。
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